ここ数年、東海地方のあじさいスポットを巡り歩いてきました。
梅雨空の下で静かに咲くあじさいは、晴れの日とはまた違った表情を見せてくれます。
雨粒をまとってしっとり輝く花びらや、日差しを浴びて淡く透ける色合い──その瞬間ごとに美しさがあり、ファインダーを覗くたび、時がゆっくりと流れていくような感覚になります。
訪れた先は、岐阜県山県市の三光寺、揖斐郡の弓削寺、愛知県稲沢市の大塚山性海寺、名古屋市の東山動植物園や茶屋ヶ坂公園など。それぞれの場所に、土地の空気や歴史がにじむ風景があり、あじさいの色彩がその魅力をいっそう引き立てていました。
今回は、その中でも特に心に残ったスポットをピックアップしました。
来年以降にあじさい巡りを計画されている方の、小さな旅のヒントになればうれしいです。
おすすめスポット
岐阜県山県市 三光寺
・住所:岐阜県山県市富岡671-1
・来訪日:2022年 6月 22日
岐阜県山県市の山あいにひっそりとたたずむ三光寺は、「山あじさいの寺」として知られる静かな古刹です。初夏になると、境内から山の斜面へと続く一帯に、約1万本ものあじさいが咲き誇ります。
ここに植えられているのは華やかな園芸種ではなく、野趣あふれる素朴で繊細な山あじさい。小ぶりな花房が風に揺れ、淡い色合いが周囲の緑と溶け合うように咲く姿は、まるで山里の風景そのものと一体化しているかのようです。
自然の地形をそのまま生かした境内は、歩くごとに視界が開けたり閉じたりし、花々の表情も移ろいます。耳を澄ませば、小川のせせらぎや鳥の声が響き、日常の喧騒を忘れさせてくれるでしょう。訪れる人の心を、やわらかく、静かに包み込んでくれる──そんな優しさに満ちた初夏の景色がここにあります。





岐阜県揖斐郡 弓削寺
・住所:岐阜県揖斐郡池田町段739
・来訪日:2022年 6月 12日
岐阜県揖斐郡池田町、池田山の中腹にたたずむ弓削寺は、初夏になると境内や山の斜面が約5,000株ものあじさいで彩られます。山の緑に映える青や紫、ピンクの花々が風にそよぎ、参道や石段を歩くたびに、色とりどりの景色が目に飛び込んできます。
雨に濡れた花はしっとりと艶やかで、まるで宝石のような輝きを放ちます。一方、晴れた日には山の上から濃尾平野を一望でき、その開放感と花の美しさが相まって、思わず深呼吸したくなるような心地よさを感じます。
古くから地元の人々に「アジサイ寺」と呼ばれ親しまれてきたこの場所は、静けさの中に季節の息吹が満ちています。訪れる人それぞれが、自分だけの初夏の情景を胸に刻む──そんな穏やかな時間が流れる花の名所です。

こちらお気に入りの一枚です。境内に続く道沿いにたくさんのアジサイが咲き誇っていたので、最も形の良い一輪に近寄ってみました。望遠レンズで背景と距離をとることにより、綺麗な玉ボケにすることができました。


こちらお気に入りの一枚です。ふわふわと八重咲ながら、あまり重さを感じることもなく素敵です。人気のフェアリーアイでしょうか?調べてみましたが、正確なことは分かりませんでした。

愛知県稲沢市 大塚山性海寺
・住所:愛知県稲沢市大塚南1丁目33番地
・来訪日:2022年 6月 5日
愛知県稲沢市にある大塚山性海寺は、歴史ある古刹と、その隣に広がる性海寺公園が一体となった、県内屈指のあじさいの名所です。毎年6月になると、約90種・1万株ものあじさいが境内や園内を埋め尽くし、訪れる人を鮮やかな彩りで迎えてくれます。
境内に足を踏み入れると、静かな古寺のたたずまいと、柔らかな曲線を描く花の群れが、まるで時を超えて調和しているかのように感じられます。古い瓦屋根や木の門越しに見るあじさいは、現代の公園で眺めるそれとはまた違う、格別の風情があります。
性海寺には重要文化財や歴史的建造物も多く、花を愛でながら文化の香りにも触れられるのが魅力です。梅雨のしっとりとした空気の中、花々の間をゆっくり歩けば、日常の喧騒が遠のき、時間の流れがゆるやかになっていくのを感じることでしょう。文化と自然が溶け合うこの場所で、心ほどける初夏のひとときを過ごせます。


この斜面一面にアジサイが咲き誇っており、その見応えは抜群です。



花びらの形がまるく、珍しいなと思ったのでマイクロレンズで接写してみました。調べてみると、どうやらポップコーンという品名のようです。その名の通りですね。とても可愛らしいです。
名古屋市千種区 東山動植物園
・住所:愛知県名古屋市千種区田代町瓶杁
・来訪日:2022年 6月 5日
実は、名古屋市千種区にある東山動植物園も、知る人ぞ知るあじさいの名所です。初夏になると植物園エリアを中心に、約30種・1,000株以上のあじさいが次々と色づき、園内の緑の中に鮮やかなアクセントを添えます。
園路を歩けば、山あじさいの可憐な姿や、西洋あじさいの華やかな丸い花房、ガクアジサイの涼やかな輪郭など、多彩な品種が次々と出迎えてくれます。ひと口にあじさいといっても、咲き方や色合い、葉の質感まで実に個性豊かで、足を止めるたびに新しい発見があります。
特に自然林を抜ける小径では、木漏れ日や木陰と花のコントラストが美しく、雨上がりには水滴をまとった花がしっとりと輝きます。動物園と植物園が一体となった広大な敷地だからこそ、花だけでなく緑や野鳥の声も一緒に楽しめるのが魅力です。動物を見に来たついでに、ふらりと足を延ばしてみれば、思いがけない初夏の彩りに出会えるかもしれません。





名古屋市千種区 茶屋ヶ坂公園
・住所:愛知県名古屋市千種区鍋屋上野町
・来訪日:2025年 6月 8日
名古屋市の茶屋ヶ坂公園は、知る人ぞ知るアジサイの名所です。梅雨の訪れが近づくころ、園内のなだらかな斜面には約6,000株のアジサイが咲き誇ります。濃淡さまざまな青や紫の花が織りなすグラデーションは、思わず足を止めたくなる美しさです。混雑も少なく、ゆっくりと楽しめます。








まとめ
今回ご紹介した岐阜県と愛知県の5つのあじさいスポットは、それぞれに異なる魅力と風情を秘めています。
歴史ある古刹に漂う静けさ、山あいに広がる自然の息づかい、そして都市の中でひっそりと咲き誇る庭園の彩り。訪れるたびに、同じ「初夏の花」でありながらも、表情や香り、空気の温度までもが少しずつ違って感じられます。
梅雨の合間、しっとりとした雨粒に包まれた花も、やわらかな陽の光に照らされた花も、それぞれが一年のうちわずかな時間だけ見せてくれる特別な姿です。そんな瞬間を求めて歩く時間は、きっと心を穏やかにし、日々の喧騒をふっと忘れさせてくれるはず。
この記事が、みなさまの「次はどこへ行こう」という小さな旅心をくすぐるきっかけになれば幸いです。
そして来年、また新しいあじさいに出会うその日まで、どうぞこの余韻を胸に残しておいてください。
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