はじめに
今年の夏も、容赦ない暑さが続いています。日中は外に出るだけでも体力を削られるような気候で、撮影に出かけるのもなかなか気合が必要です。無理に外へ出るよりも、室内で過ごしながら写真と向き合う時間を大切にしたい——そんな思いで、久しぶりに過去のデータを振り返ってみました。
見返したのは、2〜3年前くらいの写真たちです。私が初めてフルサイズ機「Nikon Z6II」を手に入れた直後です。手にしたばかりのカメラに胸を高鳴らせながら、何も分からないまま、とにかく夢中でシャッターを切っていた頃の記録です。
当時の私は、RAW現像についての知識も経験もほとんどなく、見よう見まねでLightroomのスライダーを動かしていました。ひとつのパラメータを少し変えると、写真がどう変化するのか——その都度確認しながらの、まさに試行錯誤の連続でした。「自分がどういう写真を目指しているのか?」というゴールすら曖昧で、ただただトライ&エラーを繰り返していたように思います。
あれから3年。撮影や現像の頻度はまちまちだったものの、少しずつ着実に積み重ねてきたことは確かです。ただ、果たして自分は、あの頃から本当に成長しているのだろうか——
たびたび、そんな考えが頭をよぎりました。
もしかしたら、勢いだけで走っていたあの頃の方が、写真に力があったのでは?
それとも、知らず知らずのうちに、少しずつ何かを掴んできたのか?
そんな思いを抱きながら、当時のRAWデータをもう一度、
今の力で現像してみました。
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写真の比較
それではご覧ください。写真は全部で5つあります。いずれも上:今回RAW現像、左下:Lightroomデフォルト(読み込んだままの状態)、右下:過去RAW現像、の並びとなっております。
愛知芸術文化センターからの眺め



これは、自分自身の成長が現れている一枚かもしれません。
前回の現像では、明るい部分と暗い部分をくっきりと分け、そのコントラストの強さで写真をシャープに見せようと躍起になっていました。
今回は、現像に入る前に自問自答を繰り返しました。
「この写真でいちばん見せたいものは何だろう?」
「何を強調すれば、伝えたい雰囲気になるだろう?」
その答えは、「活気づいた街の雰囲気」でした。
そこで、全体をやや明るめに仕上げ、色味は暖色系に寄せました。コントラストの低下を恐れず、シャドウも積極的に持ち上げています。夕空についても、自然さを保ちつつ、ほんの少し彩度を高めてみました。
スカイプロムナードからの眺め



全サンプルの内、前回も今回も、この写真の現像に最も苦労しました。場所は名古屋・ミッドランドスクエアの44階、屋外展望施設「スカイプロムナード」。三脚を据え、ISO100で長秒露光したのですが、分厚いガラス越しでの撮影ということもあり、RAWデータ自体がどうにもクッキリしません。
前回の現像ではどうしても眠い描写を改善できず、納得のいく仕上がりにはなりませんでした。今回、その解決のカギとなったのが、Lightroomの「ノイズ除去」機能です。ただし、SNSやブログで掲載するようなサイズでは、その差はあまりはっきりと見えないかもしれません。
もう一つ、前回と今回で明確に異なるのは色味です。今回は全体的に暖色寄りの仕上げになっています。これはおそらく、シグマfpを購入して以降、「ティール&オレンジ」などのカラーモードにハマっていた時期の影響かもしれません。
あらためて前回と今回の仕上がりを比べてみると……正直なところ、前回の色味の方が好みに合っているかもしれません。
向野橋から見た、名駅のビル群



前回の現像では、空がやや暗く沈んでしまい、写真全体の印象がどこか重たく感じられていました。そこで今回は、空の明るさを不自然にならない範囲で丁寧に持ち上げ、もう少し軽やかな印象に仕上げることを意識しました。
また、街の風景全体をよりクリアに見せたかったため、露出もややプラス方向に調整しています。ただ明るくするだけでは平坦な印象になってしまうため、シャドウとハイライトのバランスを何度も微調整しながら、情報量をしっかり残すように心がけました。
色味については、前回の暖色寄りから一転し、今回は寒色系に寄せています。冷たい色調にすることで、都会的な雰囲気や、ガラス張りのビル群の硬質な印象がより際立つと感じたからです。特にビルのエッジがくっきりと浮かび上がるよう、コントラストもやや強めに設定しました。細部の解像感を引き出すことができ、夜景ならではの光の粒もきれいに浮かび上がってくれたと思います。
今はなき名駅の象徴 “飛翔”



今はなき、名古屋駅・桜通口の象徴「飛翔」。
この写真には、自分の現像スキルの成長がはっきりと現れていると感じています。
まずはノイズ除去やレンズ補正など、基本的な処理を丁寧に施したうえで、全体の明るさと彩度をやや高めに調整しました。特に意識したのは、構図の中心となる「飛翔」の存在感をより引き立てること。そのために、角度を微調整しつつトリミング範囲を少しだけ見直しています。先端が空に向かってきれいに伸びていくような印象を目指しました。
また、額縁構図の役割を果たす手前の木々についても、葉の色が沈まないように注意を払い、鮮やかさと立体感を強調しています。この構図は、撮影当時から自分でも気に入っていたもので、今回の再現像でもその印象を大切にしながら仕上げました。
何度見返しても、我ながらこのフレーミングには納得感があります。
構図の記憶、色彩の再構築、画角の最終調整——すべてが今の自分にできる最善だったと思える一枚です。
名港トリトンと夕空



これは、少しやりすぎてしまったかもしれません。
撮影当時のことを、遠い記憶の中から掘り起こしながらRAW現像を進めました。頭の中にあるその記憶は、実際の光景よりも美化されているのかもしれません。
「鮮やかな夕焼けだったな」「もっと色が出ていたはず」——そんなふうに呟きながら現像を重ねていくうちに、このような仕上がりになりました。
おそらく、現実の風景は、前回と今回のちょうど中間くらいの色合いだったのだと思います。
それでも、私自身としては、やはり今回の写真の方が好きです。
記憶の中にある風景に、少しだけ手を添えてあげたような感覚があります。
感想
いかがでしたでしょうか。
私は日々、写真を撮ってはRAW現像を繰り返すという生活を続けていますが、そのなかで「自分は本当に成長しているのだろうか?」と感じることが少なくありません。確かに、カメラやAdobe Lightroomなどのツールの進化によって、できることは増えています。操作性も向上し、表現の幅も広がりました。
けれど、肝心の“自分の腕前”がどうなっているのか——それにはずっと自信が持てずにいました。
しかし今回、3年前に撮った写真をあらためて見直し、再現像してみることで、少しずつではありますが、確かに積み重ねてきたものがあったのだと実感することができました。
どうやら私は、過去の自分を美化し、今の自分を過小評価する癖があるようです。
今回の経験を通して、自分自身が歩んできた道のりに、もう少し誇りを持っても良いのだと気づけました。
これからも焦らず、ひとつひとつの写真に向き合いながら、前向きに取り組んでいこうと思います。
みなさんも、過去の写真を見返してみると、新しい発見があるかもしれません。
よければぜひ試してみてくださいね。
参考
本記事に掲載した写真は、全てニコンZ6Ⅱで撮りました。いいですよ、Z6II。ご興味のある方は、是非チェックしてみてくださいね。
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